「あんなに何度も練習したのに、また最初からだ…」 一生懸命ひらがなのドリルを一緒にやったのに、次の日にはすっかり忘れている子どもを見て、こっそりため息をついたことはありませんか?
「私の教え方が悪いのかな」
「他の子はもっと早く覚えているのに」
と、つい周りと比べて焦ってしまいますよね。 同じことを何度も聞かれたり、なかなか覚えてくれなかったりすると、「ちゃんと教えなきゃ」と一生懸命で頑張り屋なママほど、自分を追い詰めてしまいがちです。 でも、どうか安心してください。お子さんがなかなか覚えないのは、ママのせいでも、お子さんの能力のせいでもありません。
実は、人間の「学び方」にはちょっと不思議なメカニズムがあるのです。
私たちが何かを学ぶとき、大きく分けて「2つの方法」があると言われています。

ひとつめは「順次学習(じゅんじがくしゅう)」という方法です。これは「あ・い・う…」と順番にひとつずつ、ドリルのように反復して丁寧に覚えていく学び方。
階段を一段ずつ上るようなイメージですね。
もうひとつは「ランダム学習」と呼ばれる方法です。
これは、いろいろな情報が混ざった中から、自由にバラバラに吸収していく学び方です。
たとえば、お友だちとの遊びや、家族とのおしゃべり、お出かけの経験など、日常の中で偶然出会うさまざまな出来事から学んでいくイメージです。
実は、小さな子どもたちは、この「ランダム学習」の方がとっても得意だと言われています。
机に向かって「これは『あ』だよ」とドリル(順次学習)で教えられたときにはすぐに忘れてしまったのに、絵本の中で大好きなキャラクターの名前を見つけたり、お店屋さんごっこで「りんごくださーい」と遊んだりしているうちに、いつの間にか文字や言葉を覚えていることはありませんか?
大人からすると不思議ですが、子どもにとっては、楽しい経験やワクワクする感情と結びついた「ランダムな遊びの中での学び」の方が、ずっとスッと心に入りやすいのです。
もちろん、成長するにつれてドリルのようなコツコツした学び(順次学習)も大切になってきます。
けれど、幼いうちは、日常の遊びや経験の中に学びの種がたくさん転がっています。
だからこそ、「机に向かって完璧に教えなきゃ!」と、そんなに肩の力を入れなくても大丈夫なのです。 お買い物中に看板の文字を一緒に読んだり、お風呂の中で好きな数を数えたり……そんな日々の何気ないコミュニケーションが、お子さんにとっての立派な学習時間になっています。
毎日「どうしてすぐに忘れちゃうの?」と焦りや不安を感じたときは、ほんの少し深呼吸して、「今は遊びの中からランダムにいろんなことを吸収している時期なんだな」と思い出してみてください。

あなたは毎日、お子さんとたくさん笑い、言葉を交わし、一生懸命に向き合っています。
その温かい時間こそが、なによりの「学びの場」です。
ママが焦らなくても、子どもは自分のペースで、いつの間にかたくさんのことを心に刻んで成長していきます。
どうか、ご自身のそのたくさんの愛情に自信を持って、今日からの子育ても無理なく楽しんでくださいね。


