夜、もう少し早く寝たほうがいい時間はとっくに過ぎているのに、ついスマホをスクロールしてしまう。 そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
仕事や家事で一日中動き回り、体はヘトヘトに疲れているはずなのに。 目はショボショボしているのに、ベッドの中で動画やSNSを延々と追いかけてしまう。
「早く寝たほうが明日の自分のためだ」
頭ではそうわかっているのに、どうしても指が止まらない。
自己嫌悪に陥りがちなこの行動ですが、実はあなたが「意志が弱い」からではありません。
脳科学の世界では、この現象は私たちの脳の仕組みから説明できます。
カギを握っているのは、「ドーパミン」という脳内物質です。
ドーパミンは、私たちが「何か新しい情報」や「ワクワクするもの」を期待したときに分泌されます。 果てしなく続くスマホの画面をスクロールすることは、脳にとって「次は何が出てくるかな?」という終わりのない宝探しのようなものなのです。
私たちが疲弊しきっていて、「しっかり質の良い休養をとる」ための最低限のエネルギーすら残っていないとき。 脳は、もっと手っ取り早く、簡単に小さな快感が得られる「スマホ」という刺激に頼ってしまいます。
これは、現代という「常に生産性を求められる社会」の裏返しでもあります。
私たちは日々、仕事でもプライベートでも、「時間を無駄にしてはいけない」と無意識に自分を追い込んでいます。 効率よく動き、常に誰かの連絡に応え、求められる役割をこなし続ける。
その反動として、私たちは「なんの意味もない、ただやりすごすだけの時間」をどうしようもなく求めているのかもしれません。
寝る前の薄暗い部屋でのスマホ時間は、誰にも干渉されない、自分だけのささやかなシェルターのようなものです。
たとえば、日中に慌ただしくタスクに追われ、「自分のペース」で息をつく暇がまったくなかった日。 そんな日ほど、ベッドに入ってから長々と夜更かしをしてしまいませんか?
「今日はまだ、自分のために自由に時間を使っていない」 そんなどこかやり場のない思いが、無意味なスクロールへと私たちを向かわせているのです。 それは、一日中がんばりすぎたあなたが、無意識のうちに自分の心を守り、慰めようとしている不器用なサインなのかもしれません。
次に「ああ、またスマホを見て睡眠時間を削ってしまった」と自分を責めそうになったら、少しだけ視点を変えてみてください。
「今日も一日、誰かのためにがんばりすぎたんだな」 「私の脳や心が、空っぽに戻るための時間を欲しがっているんだな」と。

無理に意志の力でスパッとやめようとするのではなく、まずはそんな自分を優しく受け入れてあげる。 それだけでも、夜の時間は少しだけ穏やかなものに変わります。
明日の夜は、スマホのかわりに、ただ好きな香りをかいでぼーっと目を閉じてみる。 そんな、何の意味も持たない「役に立たない余白」の時間が、今の私たちには必要なのかもしれません。


