LINEを開いて、下の方までさかのぼりました。
保育園で毎日会っていた人です。卒園してから、二年会っていません。
最後のやりとりは去年の三月。「元気?」で止まっています。返していないのは、こちらでした。
三十五年一緒にいて、ほぼ会話がない二人
昨日の番組で、上田晋也さんがこんな話をしていました。
俺と大久保って、デビューして一年後くらいのライブからずっと一緒なんですよ。三十五年くらい前から一緒なんだけど、ほぼ会話したことがない
相手は、オアシズの大久保佳代子さんです。
大久保さんも「私、行かない」と認めていました。そのうえで、こう続けています。
私があまのじゃくで、みんなが行っているの、めっちゃうらやましい
水は味がしないから、飽きない
『荘子』の山木篇に、こんな一節があります。
君子の交わりは、淡きこと水の若く、小人の交わりは甘きこと醴(れい)の若し
醴は甘酒のことです。一晩でできて、甘い。ただ、すぐ酸っぱくなります。
水には味がありません。だから、飽きない。
原文はこう続きます。君子は淡くして以て親しみ、小人は甘くして以て絶つ。
淡いから続く。甘いから切れる。逆のような気がしますが、二千年以上前にそう書かれています。
濃さで測ると、続いているものが見えなくなる
去年の三月で止まっているやりとりを、こちらは「切れた」と数えていました。
連絡していない。会っていない。だから終わった、と。
保育園で毎日会っていたころは、甘酒のほうでした。送り迎えで立ち話をして、行事の情報を回し合って、濃かった。
濃いものは、環境が変わると続きません。同じ場所に毎日いる、という条件が消えるからです。
条件が消えても残っているものは、たぶん水のほうです。
味がしないので、こちらが気づいていないだけです。
今日、ひとつだけ
今日ひとつだけ、やめてみてほしいことがあります。
返していないLINEを、「悪いこと」として数えるのをやめる。
返さなきゃ、と思うから重くなります。重いから、さらに返せなくなる。半年たつと、もう返せません。
大久保さんは「行かない」と言いながら、「うらやましい」とも言っていました。近づけないだけで、嫌いなわけではない。
返していないことを、向こうが数えているとは限りません。
三十五年ほぼ会話がなくて、それでも同じ番組に出ています。
去年の三月から止まっているやりとりも、まだ消えてはいません。
甘酒は酸っぱくなりますが、水はそのままです。


